医院ブログと歯の豆知識

CLINIC BLOG & TOOTH KNOWLEFGE

その他2021.09.05

歯科医療の未来「デジタルの力」

今回の新型コロナウイルス感染症の蔓延でZoomミーティングなどが新しいテクノロジーが使用される様になりました。
私も今年の歯科衛生士学校の授業はzoomで行っています。
その場にいるからの空気感や、現場のいるから伝わる学びはテクノロジーが進歩しても替えがたいものだと思います。
でも、知識を得る為に授業を受けたり、会議をするのにzoomやyoutube でも相当効率化をする事ができるのも事実です。
場所がどこでも出来るという自由を得る事で仕事や学校の形も変わると思います。

では歯科の世界でこれから革新を起こすものは何でしょうか?

間違いなくこれから最も大きな変革をもたらすのはデジタル技術だと思います。

現在、レントゲン写真を手で現像する歯科医院はさすがにそれほど多くなったと思います。
少し前は歯周病を頑張っておられる先生方で、デジタルと現像では得られる画像が違うと、あえて手で現像する医院もありましたが今後は無くなっていくと思います。
僕が勤務医の頃は当たり前ではなかったのですが、今ではどの医院でも口腔内写真もレントゲンも全てデジタルになりました。
それにより、データでの保存とモニターで表示が可能になった事で各診療チェアで患者さんに拡大してお見せする事が出来ます。治療方針をご理解頂く為にはとても便利です。
また、歯科医師間で症例検討するにしてもメールで簡単に色んな地域の先生と情報を共有することができます。

少し前まで歯科用CT,マイクロスコープ、CADCAM、は、いわゆる設備が整った歯科医院の三種の神器と呼ばれていましたが、新規開業の医院では当たり前になりつつある気がします。

その中でもCADCAMは精度が上がり、価格は下がってきました。
今までよりも広い範囲の治療が保険適応されたのも大きく影響していると思います。これからもその流れは続くと思います。

歯科医院で多くの患者さんが経験されている治療に
「歯型を取って修復物や被せ物を作る」
という治療があります。

歯型を取る時には「印象材」という材料をトレーに盛り上げて口の中に入れて固まるのを待ちます。
その際に、印象材を練りあげたり、硬化する際に寸法変化があります。温度や水分の量で
そして口の中から歯型を撤去する際にわずかに印象材が変形をします。
そこに模型を作成する為に石膏を注入します。
石膏模型を作成する際にも石膏の種類、温度や練和する水分量、硬化までの湿度の影響を受けます。
そしてその石膏模型を分割し、作業模型とする際にも微細な寸法変化があり、そこで修復物や被せ物を金属で作成するのであればワックスアップというロウで修復物の形を作る過程があります。これでも寸法変化があります。
これを埋没材というものを練和し、その中に模型上で作成したワックスパターンというロウで作った修復物を埋めて、硬化したらファーネスとい炉に入れてロウを溶かしてそこに金属を流し込みます。
この工程でも埋没材、金属、それぞれの膨張と収縮があります。
冷えた金属を埋没材から取り出して研磨して完成となります。

これだけ多くの寸法変化である中で歯科技工士さんは最終的に口の中から得た情報で修復物が口の中にちょうど良く納まる様に作成するのです。

患者さんからすればピタっと作れて当たり前だと思うかもしれませんが、この膨張、収縮の寸法変化を繰り返す工程を最後に帳尻が合う様に作成するのは大変な事です。
CADCAMのシステムでは型を取る際、模型を作成する際、などを温度や術者のテクニックに関係なく寸法精度を高める事ができます。
型を取る間に硬化に時間がかかり気持ち悪くなってしまう患者さんにとって口腔内スキャナーで光学印象を採得する事はかなり苦痛を軽減することになります。
噛み合わせを採得するときも上下の歯が接触する点が少ない場合は「咬合採得」は難しくなります。これもCADCAMは簡便に行う事ができます。
インプラントの手術を正確に行う為のサージカルステントという型枠をCTとCADCAMシステムを合わせる事で、院内でも比較的簡単に作れる様になりました。また、インプラントが骨の中にどのように入っているかを記録するピックアップ印象という歯型を取るのは患者さんに負担の大きいものですが当院では「アトランティス」というシステムを用いて完全にデジタルで行う事ができます。

今の技術では全ての型を取る治療で、完全に口の中を再現できる訳ではありませんが、間違いなく今の技術の延長線上に歯科の未来があると思います。
開業した14年の間でデジタルの技術的革新が最も目覚ましいものでした。

現在、歯科技工士さんの仕事と手間が時間のかかる割には収入が高くないので、3年以内に学校を卒業した技工士さんの5人のうち4人が辞めてしまうそうです。

当院は模型作成を始め、院内での診療をより精度高めたり効率的に行う為に院内技工士がいてくれていますが、仕事の内容によっては遅くまで残っていたりします。

歯科医療を担う技工士さんが少なくなる未来では、デジタル技術は様々な工程の影響を精度高く患者さんの負担を減らす事が出来る様になるでしょう。

現在、当院ではCT、CADCAMはデンツプライシロナ社のシステムを使用しています。

歯型を取るのが気持ち悪くなってしまうので苦手だという患者さんは多いと思います。
保険適応で出来ることと出来ないことはありますが、今は苦痛を少なくする一助になればと思っています。気軽にお声がけください。