医院ブログと歯の豆知識

CLINIC BLOG & TOOTH KNOWLEFGE

歯の豆知識2023.05.07

歯科医院の「誠意」は正直に伝えること

ある患者さんのお話です。

「他院で3ヶ月をかけて数十万円をかけて治療をしてきたけれど、痛みが一向に引かない。既に自費診療でお金も前払いしている。どうすれば良いか?」

という悩みを持って来られました。

当院でレントゲンや歯周検査、CT、診断を行った結果、その歯は抜歯が適切な治療であると判断となりました。それだけではなく、他の歯にも軽症ではない問題を抱えている事が分かりました。

その患者さんはショックを受けて、その後、ほぼ話をするだけの急患で何度も来られる様になりました。

この患者さんは歯の問題だけではなく、心も病んでいます。

私はそれを患者さん御自身にもお話をしましたし、患者さん御自身もその自覚をお持ちです。

勿論、以前にかかっていたいくつかの歯科医院と歯科医師、そして話をした院長の僕の責任があると思っています。

でも、その結果は心無い歯科医師によってもたらされたわけではありません。

患者さん御自身が糖質の摂り方、歯科医院に痛みが出てから行くのではなく、定期的に通っていれば、ほぼ防げた事です。

むし歯は糖の摂りすぎによる生活習慣病である事と、もし、むし歯を作ってしまったとしても歯髄に至らないうちに治療を行える様に定期的にメインテナンスに歯科医院に通っていたならば、この様なことにはなりませんでした。

患者さんが御自身の身体に対して配慮を欠いたことは否めません。

決して患者さんを責めるつもりはありません。しかし過去に原因があって、その様な出来事が起きている事を

そして、この患者さんの場合で言えば、時間をかけてお金をかけて治療したけれど抜歯という結果を免れられないとするならば、それを受け入れられるか否かしか選択肢はないのです。

そして他の抱えている歯の問題の解決の為に出来ることの優先順位を決めて、治療を進めることです。

人は失ってから、失ったものの価値に気づくことが多いです。

これは患者さんだけでなく、僕でもそうだし、ある部分においては誰でもそうだと思います。

でも、事実を受け入れていかなければ、次には進めないのです。

そして事実は不快なものでショックだったりするので、それを伝え、患者さんに決断を促すのは、ともすれば患者さんの信頼を失うリスクをがあります。

他の患者さんには、前歯の裏側が銀色なので変えたいという患者さんがいらっしゃいました。また、奥歯の銀歯をセラミックに変えたいというご希望を聞きました。

この患者さんには、治療はしない方が良いとお伝えをしました。

その後、メインテナンスでずっと通って頂き、お引越しをされることになり、最後の来院時に

「私がこの医院に通ったのは、医院にとって儲けにならないことでも、必要ないことを必要ないと言って頂いたからです。医院とすればセラミックに変えることでお金を稼げるのに、やらなくて良いと言えるのはなかなか言えないと思ったので信頼できると思って通いました。自分の仕事でも顧客利益を考えた仕事の大事さを感じました」

と仰って頂きました。私達の思いを御理解頂き、また信頼をして通って頂いた事は本当にありがたいと思いました。

私が開業した時にネット社会になり、色んな情報が患者さんは手に入れることが出来ます。

多くの歯科医院、歯科医師は情報を発信しており、価値観や得意としていること、大事にしていることがそれぞれの医院、歯科医師で違うことはあると思います。

そして違いではあっても間違いではないと思います。

と、同時にどう考えても全く患者さんにとって有益ではない情報も氾濫しているのもまた、残念ながら事実です。そして膨大な情報の中から患者さんがどの情報が正しいのかを見極めるのは容易ではないと思います。

結局、ネット社会になったからこそ、最後はより一層、「正直であること」だと思ってます。

後にいずれ嘘はバレます。また嘘ではなくても、今は正しくても後の世では間違いになることもあります。天動説とガリレオの地動説の様に常識が変わることをパラダイムシフトと言います。ガリレオは正しかったのですが、彼の生きた時代ではそれは神への冒涜ということです、裁判にかけられて、主張を変えない限り死刑になる事になりました。ガリレオは自分の主張を取り下げますが「それでも地球は動く・・・」と言ったとか・・・。

きちんと知識と技術を持っていることは前提で、加えて歯科医師、歯科医院の継続学習は大事です。

その上で「誠意」がとても大事だと思います。

事実は時に残酷だし、時に不都合です。

それでも、過去と事実は変えることが出来ないのです。


私達は解釈と未来を変える為の思考と行動をするしかないのです。

先日、学校医になっている中学校に学校歯科検診に行きました。

最初に言った時に比べ100名以上生徒は減り、むし歯のある生徒の数も減っていました。

秋には学校歯科検診の限界と予防の重要性についての講演を再開する依頼を受けました。

学校でも治療ではなく、予防の重要性きっと若年層でのむし歯、歯肉炎h家庭の事情などもあるので完全になくなる事はないでしょうが、その人数は減っていくことと思います。

と、同時に歯並びの悪い生徒は増えているように感じました。

これは歯並びが悪くなる習慣が増えている事が関係している様に思います。

口呼吸による影響が関連しています。コロナでマスクをする時間が長いことや、ゲームや勉強で下を向く時間が長いことが関係しているかもしれません。

むし歯治療から習慣の改善へ

欠損の補綴(歯を作ること)から歯を失わない予防へ

歯科医院は患者さんに「伝える」ということが最も、と言っていい位に重要な仕事になっていくと思っています。

そしてその言葉は正直であり、仕事への誠意を常に忘れてはならないと思っています。