医院ブログと歯の豆知識

CLINIC BLOG & TOOTH KNOWLEFGE

その他2021.12.06

歯医者の本音

世の中にある仕事で、どの分野においてもプロフェッショナルはいつでも最高のパフォーマンスを目指していると思うよ

でも、いつだって上手くいくわけじゃない

自分の至らなさなのかもしれないし、状況が悪かったり、運が無い時も手の施しようが無い時もあるかもしれない

上手くいかない時は落ち込んだり、自己嫌悪したり 言い訳したり

難しい状況ならばどの仕事の誰でも確率が下がる

だから出来るだけ得意な範疇に持ち込みたい

上手くいかないことは苦しい

患者さんの落胆した表情や、不信感。場合によっては怒り。どれだって心地いい事はない

歯医者だったらさ そりゃ感謝されてばっかりの毎日が良いに決まってる

削るのが上手い人は日々の診療で削りたいし、自信がないなら削りたくない

でも技術が上手でも、でかく削れば痛くなるよ

歯自体は「死んでるもの」で出来ているから、虫歯は痛くない

でも悪いところ全部取ると歯髄に刺激になるから、痛み出るんだよ

小さいうちなら世の中のドクターの誰だって上手くやれる

でも歯髄取るとか、既に根尖病変がでかいとかになると人を選ぶ

俺も他のドクターから「次回 院長」って回ってくる時は、お手上げ万歳しちゃっているわけだから、そういう仕事はいつだって厳しい

マイクロスコープ550万 ラバーかけりゃいつでも根管治療は赤字

じゃあ自費でやるか? 確率が高くない治療に?

専門医がやっても感染をとるために歯を削るわけだからやる事は基本一緒 専門医だろうがマイクロスコープだろうが、MTAセメントだろうが魔法の道具も方法もない

だから根の壁が薄くなる

そうすると折れるんだよね再治療で厳しいものであるほど。

歯を抜くのが苦手なら、抜歯は回避したい 得意だからやたら抜くってことはないけど

外科処置が好きな先生はいるね 俺も最近の仕事じゃ好きかも いやどうかな やっぱりリスクあるし、キャリアを積んでも怖さはどこかにある

インプラントだって人生の後ろの方や、骨がない、肉がない、病気になった、等いろんな条件によっては「やらなきゃよかった」事もあるだろう。でも診断バシッととやってした治療ならそれは後に結果が悪くなってから分かる事なんだ

何より患者さんは怖いからさ やらないに越した事はない 怖いことするドクターは嫌われるしね

補綴(被せ物や入れ歯)が得意、って事は良い技工士がいないと話にならない

型を採るのも材料や天気でも湿度でも変わるから、技術力以外に模型をしっかり作る環境整備が必要だよね

それに加え、バシッと作れる人と組んだ上で、こちらの仕事とシンクロしないと結果は出ない

それに歯は「治したところから悪くなる」この事実を知らない人はいない。審美、って言って前歯全部削って被せちゃうのは歯にとっては医学的にはライトな自殺だよ

すげえ苦労してロングスパンのブリッジ入れて、数年後に二次カリエスで頭抱えることも多い

やっぱり沢山削る羽目になる人には原因があるんだ 厳しいものは予後も厳しい

兎にも角にも俺達の仕事の8割は虫歯と歯周病

虫歯は2歳から口の中に住んでいる細菌が炭水化物を代謝して起こる

だからこそ食生活と歯磨きと予防が1番確率が高い勝負ができる

そもそもちゃんと虫歯取れない歯医者も沢山見るけどね

厳密に言えば取れないんじゃなくて取れているかみていない

他の医院で治療したばかり、という人に何て言えばいいんだろう ちゃんとやれよと思うけど、そういうのが多いから、うちが勝てているのも事実だけど。

だから虫歯は食事の気をつけて歯磨き頑張る。こどう考えても一番コストかからず痛い思いもしない

歯周病は技術も大事だけど、日和見感染で生活習慣病だからさ

人間は立派でもないし、やっぱり定期的なに自動的にチェックするのが1番良いんだ

全身的に免疫が弱ければ細菌に負けちゃうよ 全身疾患持っていたり、体弱かったり、仕事や介護で忙しすぎてストレスでボロボロだったり、遺伝的に歯周病菌に弱い人は若いうちから「発症させない事」をコツコツやるしかない

親が歯周病で苦しんでる人は子供メインテナンスと歯磨きの習慣は絶対に気をつけなきゃ、後で後悔することになるかもしれない

上手に歯磨きしてくれないとテクニックだけじゃどうにもならない

タバコも悪いんだよね 金魚鉢に入れたら金魚死ぬじゃん 末梢への血液供給を阻害しておまけに毒なんだから、某先生が「タバコ吸う人は来院お断り」っていうのも極端だけど

歯周病を治すのは主役は患者さんと歯科衛生士。

それをドクターがやる医院は衛生士が取れないか暇なのか

そんなに手術しなきゃいけないケースは多くない筈だ

衛生士は採るのも育成も簡単じゃない

今の子達を育成するのはジェネレーションギャップある俺達とは価値観も時代も違うからさ

実は院長なりにおっさんなりに、教えるこっちもメンタルやられるんだぜ

だからこそ出来れば特別な技術を駆使する必要はないように重症化させない事が大事だって思う

歯列矯正もさ、とんでもない診断と治療するのも世の中にはいるんだよ

2000万位上金使って、時間使って、手間かけて、勉強してきた

最初は患者さんの為、なんて素敵な理由じゃない

臨床現場に立つ時に自信がない自分でいるのが怖くてそんな場面を少しでも無くしたくて

そして、本音を言えば上手くなれば患者さんがきてくれるって勘違いして自分の生活を豊かにしたくて自分の為にやった事だ

でも本当に大事なことは特別な技術なんかじゃなかった。

当たり前なんだけど患者さんとの信頼関係を作ることだった

勿論、知識や技術も大事だけど、俺は熱量だったんじゃないか、と思う。

患者さんが自分のことを本気で全力を尽くしてくれるか、ちゃんと説明してくれるか、そちらの方がよほど重要だった

でも、それでも感謝してくれる人が出てきて、雑誌で見て「すげーな」と思っていた仕事がそのうち出来るようになって、知恵つけて経験して歯医者の嘘も沢山分かる様になって、そこから思いみたいなものが生まれてきた

そうすると、働く事にお金以外の意味が本当の意味で出て来た

結果、色々やったけど今は街の開業医にそんなに特殊なものは要らないと思っている。そもそも特殊も定義も変わってきているけれど。

開業して14年間、色んなものを見て技術や材料の魔法の杖はない事を知った

勉強会や学会に行ってみて、今思うのは歯医者が思う患者さんへの治療の価値と患者さんが本当に感じる価値は乖離があった

今日も地元の歯科医師の先輩が言っていた。老年学会で色々話したところで、老老介護や本人の生活強度が上がる訳じゃない。話し合いの為の話し合いをしているって。

色んな商業研修会があって、学会があって、あーだこーだ言っている事の意味は何なんだろう?

俺の頭の中では、街の臨床医は当たり前の事をまず徹底してやり切る事しかない、と思う

俺一人で診療するよりも得意な事、出来る事、専門性のある先生と協力してやった方が良い結果が出ると思い、矯正専門医、口腔外科専門医、院内歯科技工士と仕事をさせてもらっている。

院長一人診療は良し悪しあると思う。医院のパフォーマンスが院長の気力、体力の衰えと共に下がる事になるから。

院長は歯医者だけど零細企業の社長だからマネージメント業務、教育業務に時間を割かないと医院の質は維持できない。

院長以外のドクターや衛生士の医療レベルを上げる取り組みと診療に患者さんの利便性や効率化を実現するためにスタッフの採用と教育、システムを構築する事は頑張らないといかんね。

最近は労務も超大変。日本の労務は狂っていると思う。こんな事していたら人も企業も育たちにくいと思う。

歯医者は全国に7万件位あって、地域の他の医院とみんな競争している

だからこそ「うちは特別です」って言えないと怖いんだよね。食っていけないんじゃないかって。

その中で生き残っていく為には隣の歯医者より優れた自分、優れた医院でなければいけなくて、その状況はきっとそれはこれからも変わらない。

元々陸上やっている時も闘争心は強かったから、勝負事は嫌いじゃない。

でもこの年になって医療は「競争」じゃないって思う。

東日本大震災、コロナ禍、これからくるインフレなど勤務医の時には経験もしたことはない、考えも及ばない事が人生に起こる事は、これからの人生でもはや珍しいのではなく必然なんだろう

自分自身も来年も健康なのか、生きているのか、わからないって本気で思う年になった。

若手ではなく中堅になり、キャリアの終わり方も考える機会が増えた。

若いうちには極端な言えば「人生に終わりはない」って思っていたんだと気付く。

人口減少、材料費の高騰、労務の事、色々考えると「保険じゃやっていけませんよ」という声をよく聞くし、数字見ていればそう思う。お医者さんにかかって病気の話をされるのがメインだけど歯医者は金の話しなきゃいけないし、歯医者の経営の話聞いてると一生懸命やるけれど、俺、これ好きじゃないな、何だかな、と思う機会は多いよ。

気分悪い事が多いから今の歯科業界はあんまり好きじゃない。でも、好きじゃないって見限ってこのまんま辞めたらそれはそれで無責任な気がする。

うちの代診には時代が変わった時にも医療として恥ずかしくないことをやりながら歯科医院を経営して生きる術を示してやれたらいいな、とは思う。

下の世代は「先輩たちのせいで・・・・」って思うはずだ。

患者さんが来院前にホームページやgoogle my business のクチコミ等の情報の入手は必須で、これからは簡単で必須なネット社会になってきて、開業当初と比べても全然環境が違う。これからも更に今までの歯医者の評価基準も変わっていくだろう。

このブログはどこまで誰に読まれているのか分からないし、本音で口語調で語る事は乱暴で粗野に思えるかもしれないからプラスじゃないかもしれない事は分かっている。

情報発信として正解じゃないかもしれないけれど本音をいつもの言葉で語れるのは自分のところのホームページくらいだから書いてみました。

もし最後まで読んでくれた方がいらっしゃればありがとうございました。

こんな院長と医院で良かったら、虫歯も歯周病も生活習慣病である以上は末永くお付き合いいただければありがたいです。