医院ブログと歯の豆知識

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歯の豆知識2021.11.12

CADCAM冠(保険の白い被せ物)の適応範囲について

今度の日曜日は矯正日です。
日曜日は診療、木曜日はお休みになりますのでご了承ください。

虫歯治療をして、笑った時に銀歯がキラッと見える様になってしまうのは誰でも避けたいものです。

今回は保険診療において銀歯になる時と白い歯で出来る場合について解説させて頂こうと思います。

虫歯治療は重症度によって大きく2つに分かれます。

①歯髄(歯の神経)が残せる場合

②歯髄を取る必要がある場合

です。

歯髄が残せる場合は多くの場合、歯丸々1本を削るのではなく、部分的に削り、無くなった歯質を人工物で補って修復します。

小さな虫歯はコンポジットレジン修復が第一選択になります。
コンポジットレジンとは歯の色に合わせて開発された樹脂です。
1日で詰めて治すことができ、仕上がりも目立ちにくい方法です。

隣の歯との接触点(コンタクトポイント)を失う位に、また残っている歯質が少なく噛んで割れてしまう恐れがある位大きく歯を失うと、歯の形を復元して、歯と歯のあいだにものがつまらない様に修復する事が難しくなります。
そういう場合は歯型を採って模型を作り、歯科技工士さんが修復物を作成します。修復物を「インレー」と言います。インレーよりも咬頭という尖った部分を覆い修復する時「アンレー」と言います。
型を採る日と出来上がってきた歯を装着する日の2回診療回数がかかります。
保険でできるのは「金銀パラジウム合金」いわゆる銀歯のみです。

インレー、アンレーを白い修復物をつくる場合は保険が適応できません。
理由は保険制度でそう決まっているからです。セラミック、ハイブリッドセラミック、e-max,ジルコニアなどいくつか材質がありまして、それぞれ特徴があり、値段も違います。
それぞれの素材の特徴について詳しくはスタッフまでご確認ください。
一番多く出る材質はe-maxです。セラミックより割れにくく、強度があります。

②歯髄を取る必要がある場合は、虫歯に感染している歯質の他に歯髄を取るために歯の中央に大きく穴をあけます。
ですので、歯髄を取った歯は一般的に残っている歯質が少ないので咬む強度に耐えられる様に全体を覆って被せます。
この被せ物を「クラウン」と言います。
少し前までクラウンは「金銀パラジウム合金」、いわゆる銀歯でした。
それが、近年CADCAM 冠という材質が認可され急速に使用されてきています。
この背景はおそらくは金属の値段の急激な高騰により、保険診療では国が材料費を賄うのが厳しくなってきたからでしょう。
保険の金属の主成分のパラジウムは、以前は安い金属でしたが、今は金の1・5倍します。
環境問題によってガソリン車の排ガスをきれいにする為に使われる様になり、急騰したのです。
そもそもは金属の修復部材料として理想的なのは金ですが、金で全部作ると高くつくのでプラチナに似た金属を混ぜて腐食しにくく強度のある「銀歯」にしていました。しかし、パラジウムの急騰により保険の銀歯は金より高コストになってしまったのです。
そこで、セラミックとレジンの混合で出来たハイブリッドセラミックのブロックが開発され、近年、保険の適応が広がってきました。ハイブリッドセラミックのブロックを専用のコンピュータで設計して機械で削り出して作った歯をCADCAM冠といいます。

クラウン作成にあたってCADCAM冠の保険診療の適応は

1:前から数えて4番目、5番目の歯は使用加納

2:第二大臼歯(親知らずを除く一番奥の歯)が4本残っていれば、第一大臼歯(前から6番目の歯)に使用可能

となっています。
理由は金銀パラジウム合金の歯より強度がなく、一番後ろの歯として使用すると破損や脱離の恐れがあるからだと思われます。

この条件に当てはまらない場合はクラウンは全て銀歯になります。

それぞれの特徴としては金銀パラジウム合金の方が強度はあります。CADCAM冠より割れたり取れたりがしにくい様に思います。
CADCAM冠は色が何種類もあり、患者さんの歯の色に近いブロックを選んで作るので、色は「歯の色」です。
ただし、ブロックなので、単色で少し偽物っぽいです。リアリティのある目立たない歯を作りたい場合は、人の手で色を調整した素材や方法を選択する必要があります。
前歯部などで、隣の歯が天然歯の場合はあまり推奨できません。
また、前述の通り、金属より割れたり取れたりはしやすい素材です。
白くて強度があるものは保険外になります。

まとめると、部分的な修復であるインレー、アンレーは保険なら金属になります。
全部を被せるクラウンについては第二大臼歯が全て残っているか否かで適応範囲が変わります。

患者さんにはこの適応範囲はとても分かりにくいと思います。
患者さんは「ここは保険で白い歯で治してくれたのに何故、ここはダメなんだ」というご質問をよく受けます。
多くは保険制度によるものです。
例外的に銀か白かではなく、強度の問題で素材を選ぶ場合もあります。

誰でも銀歯を入れたい患者さんはいません。(ラッパーを除く)
僕達もなるべく良い見た目で治して差し上げたいのですが、この様な保険制度という法律があることを知っていただければと思います。

何はともあれ、一番重要なのは自分の歯を大きく削るほどの虫歯にしない事だと思います。
自費診療だとお金が高いからという理由で、本当は銀歯は嫌だけど仕方なく諦めている患者さんを診ると胸が痛みます。
銀歯にしないこと。
それには、予防することと、大きく削る必要がないうちに早期発見して治療をすることです。
虫歯は「痛くない」病気です。
痛みが出た時はそれなりに重度な虫歯です。
ですので歯科医院には痛くなってから来院するのではなく、痛くならない様に来院する場所に変えること。
いつもいつも同じことばかり言いますが、それが本当に重要だと思っています。
でも健康はお金では買えません。
1億円かけて作った歯があっても天然の歯よりも良いということもありません。

出来ればコンポジットレジンで治るうちに受診して頂けると、と思っています。